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親なきあと問題について学び、他のご家族に相談できるコミュニティ

親なきあと問題について学び、他のご家族に相談できるコミュニティ「あしたね」

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【実務経験者に聞いてみた】現在の成年後見制度にはどんな課題があると思いますか?

思いつく課題としては下記の3つがあります。

①後見人が一度ついたら簡単には外せないこと
②費用への忌避感
③意思決定支援の難しさと後見人の孤独

ーー
①に関しては、後見人は本人の判断能力が不十分である限り、判断能力が回復するまで後見業務が続いていくということです。

しかし、たとえば親なきあとにおいて大きく生活が変わったあと、数年間施設での生活に変わりがなく、また財産管理についても施設である程度行えるというような状況であれば、後見人がおらずとも被後見人の生活に支障が出ないようなこともあり得るでしょう。

そのような生活安定の状況になった場合、後見業務が終了するというようなやり方も可能性としてはある気がします。そうすると、その後よ後見人の報酬による金銭的負担を減らすこともできます。

他にも、たとえば生活安定の状況になった場合、後見人による施設の金銭管理体制のチェックを年に1回だけにするなどして、後見人の業務を減らし、その分後見人の報酬も減らすというようなやり方もあり得るのではないかとも思います。

このような期間限定での後見人の活用についても、今後法整備が進んでいくことを期待するところです。

②に関しては、やはりお金がかかるからという理由で後見人をつけたがらない方もいます。
とくに後見人の報酬が月2万円ほどを基準にしているので、やはり一般的な家計にとって安い金額ではありません。

おそらく安くすれば良いということもなく後見人の仕事量や責任を考えたときに、割りに合わないと感じる後見人もいるかもしれません。後見人の人数と質の低下につながるのではないかと思います。

解決策としては、まず報酬の基準をもっと細かく決めて公開すべきだと思います。
たとえば生活保護を受けている方の後見人も月2万円の報酬を受け取れるかと言われれば、(私の体感になりますが)そういう場合はほとんどありません。

被後見人の流動資産が1000万円以上あると、報酬が月3万円〜になるというような情報は公開されているのですが、そのような情報よりもお金や収入がない方の場合、どうなるかというような情報の方が皆さん知りたいのではないかと思います。

はっきりと月額の報酬などがわかればもっと利用に踏み込める人も多くなるのではないでしょうか。

他にも成年後見制度利用促進事業など、報酬を補填してくれる事業もあるので、そういった情報を積極的に周知していいくことも重要なのでだと思います。

③に関しては、個人の後見人が業務を遂行していくときに、本人の幸福にもっとも貢献できる選択は何かを考えるときに、独りでその選択の責任を負うのは大変な場合があるのではないかということです。

後見人が適正に業務を行うためには、法知識が不可欠であり、ケースによっては司法書士・弁護士でも判断に困ることがあります。

専門職以外の方が後見業務を行う場合は知らず知らずのうちに、不適切な判断をしてしまっていることもあるようです。

そこに、本人の意思決定支援という明確な答えのないところで、最良の選択を考えなければならない状況がきてしまうと、後見人が孤独な中での重責な判断を強いられてしまうこともあり得るでしょう。

私の体感ですが、そういった難しい判断ほど家庭裁判所に報告・相談しても「後見人の判断にお任せします」というような回答になることがほとんどだと感じています。

解決策として、ひとつは法人後見を増やしていくということがあげられます。
チームで後見業務を行うことで、相談しながら判断していくことができるので後見人が孤独になってしまうことを防げます。
なるべく医療職、福祉職、法律職などのいろんな職種の方が集まると多方面からの意見をあわせることができるので良いと思います。

他の解決策として、公的な「後見人相談室」というようなものをつくってもらいたいなとも思います。
色んな職種が集まった専門家集団の相談室で、地域の後見人からのいろんな質問に答えてくれるような相談窓口を想定しています。
そういったところに行政の予算を割くのは難しいかもしれませんが、後見人の業務による事故を格段に減らすことができるでしょう。

(司法書士法人AXIS法務事務所 代表司法書士 / 親なきあと問題相談室ファミリア 渡邉 護先生)